熟練工は完璧か?人の間違いをシステムでカバーするドイツ
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筆者がドイツに滞在していた時、「ドイツ車は金曜日の午後に製造されたものは質が悪いんだよね~」と冗談交じりに現地人から聞いたことがある。
それは、金曜日の午後になると、作業者は週末遊びに行くことや、ビアガーデンに行くことで頭がいっぱいになり、作業ミスが増えてくるからなのだと聞いた。
つまり、熟練工であっても、気持ちの変動や精神状態に左右されてポカミスを犯すものなのです。

もちろんこんなことはいまどきドイツではないと思うのだが…

そういっただれにでも起こりうるミスによる品質問題を、インダストリー4.0は解決していくのだろうと思うし、ドイツがそれを国策として全力で取り組んでいる意味も分かる気がします。
たとえばドイツの場合は、ずいぶんも前から日本以上に少子高齢化の問題や熟練工不足に悩まされており、それを補うために特に移民や東欧からの出稼ぎ労働者に頼っている事が多い。そうなると、言葉の壁や技能の伝承などが問題で、特に自動車の最終組み立て工場など、複雑かつ大量の部品を正しく組付けなければならない現場では、品質を確保するのは至難の業である。金曜日午後の品質低下の比ではないのである。

工場のモノづくりで失敗が起きないようにするために、作業者のいる各工程においては、大型ディスプレイに図や写真を用いた作業指示が映し出され、使うツールは作業手順通りにしか動かないようにプログラムされ、行った作業の記録はかなり詳細な情報まで製品シリアル番号と共にサーバーに保存されるといった具合だ。

たとえば、ドイツの完成車組み立てメーカーでは、単なるボルト締めに見えるような工程も、締付ツールにGPSを利用し、ツールで締め付けた位置を管理し、その位置と連動して作業指示およびプログラムがワイヤレスで伝送され、締め付けを行った結果や測定データ(締付トルク・回転角度のプロットデータ)も含めてサーバーで保存し、解析にも使用するといった念の入れようだ。当然、車体や主要部品にはRFIDが組み込まれているのである。

まずは「人を100%信じない」「人は間違えるもの」だという事を前提にして、それをシステムやテクノロジーでカバーをするという発想…これが現在のインダストリー4.0を国策で進めている背景にあるようである。